- 2009年3月21日 16:41
- game
けよりなとそれちるとかにしのの区別がまったくついてない私だが、その知名度や評価にいつかはやってみようと思っていたところ。
今回発売されるFDに本編が廉価で付いてくるというので、いい機会なのでやってみることにした。でも良く考えたらFDはいらなかった。ていうかずっとFDじゃなく続編だと思ってた。
ここではそのおまけとして付属する本編について簡単な感想を。
(バレはないかと思います。)
さて、結論から言うとこれは大変に良いものだ。
シナリオは目新しさや奇抜さを用いずオーソドックスな展開を見せる。テキストもロミオの自在さや先日やった王雀孫の勢いといったような目立つ特徴はない。全体的に「地味」という形容がしっくりくる印象なのだが、やり始めると不思議な雰囲気の良さに気付く。
登場人物は総じて思慮深く好感が持て、局所的とはいえ肯定に満ちた作品世界はプレイヤーにとって多幸的。各シナリオで取り上げるテーマは人物の身の丈にあったものにも係わらず、遠距離恋愛の不安から異文化交流、果ては政治的リーダーシップのあるべき姿まで意外と多様だ。これらが世界設定や人物設定、関係性から自然と浮き出て物語に溶け込んでいく様子は力量を感じさせるものだった。
「なんで」「どうして」をただ連呼するだけで脳機能を使わないアホの子がこの業界やアニメなんかには頻繁に登場するが、本作では「どうしてだろう」と考えるステップがある。分からなければ周囲にアドバイスを求め、求められた者は自分の立ち位置や経験を踏まえて応じる。それを足がかりにまた「どうすべき」かを検討し、見直すもの、譲れないものの線引きをしていく。このプロセスが人物に思慮深さを感じさせ、また日常でも適宜挿入される対象を慮った表現が雰囲気の良さを積み重ねていく。
各シナリオで扱うテーマに対する取り組みは深く考察したり長く論述したものではないが、その解はこのようなゲーム作品で示されるものとしては不釣合いなほど本質的で驚く。これは登場人物から導かれたものではなくライターの思想を写したものなのだろうけども、違和感なく登場人物に投影し、それに立脚した言動を貫いた人物の描写は私にとって示唆のあるものだった。
これらを短い(一編3時間くらいだろうか)シナリオに落とし込み、大仰な言葉を用いず平易な文章で表現しきったのは特筆して賞賛したい。
表現力とは何もとんがった言い回しや文字の量だけから生まれるものではない、と改めて気付かされたことに私としてはとても意義があった。
ところで、メインルート以外では「ちょっと脇っぽいかな」と想定されるシナリオが力強く良いシナリオかと思うので、考慮して進めると良いかもしれません。
具体的に言うと 翠編、さやか編がいい出来です。エステル編も捨てがたい。ていうか「遠山さんと愉快な仲間たち」に交じれない私は負け組。
逆に年下コンビと幼馴染はだいぶ微妙かと...。むしろいらないだろ...。
特にミア編は明らかに取り扱い方を間違えてる。「お前はなにも分かってない!」とライターに指差したい気分で一杯になること請け合い。これ書いたの同じ人なんかなぁ...。
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